フォルテッシモ
PM5:00夏の日は傾き暑さのピークは過ぎました。
レーシングスタンドから慎重にマシンを降ろしテストトラックに引き出します。
メインキーをひねると、マレリの針は準備運動のため一度だけフルスケールまで往復します。
スターターレバーをいっぱいに引き、親指を押し込めば、2秒程して、その情熱的なマシンは目覚めます。
水冷Lツイン、ツインカム4バルブ。デスモドロミック機構によって抵抗なく回るエンジンは、乾式スリッパークラッチからけたたましい金属音を撒き散らし排気音さえかき消します。
ドカティー749R
このマシンに「火」を入れるのは40日振りです。
嫌いになった訳ではありません。あまりにも暑い夏、シートの下にマフラーを抱えるこのマシンに乗るには相当な覚悟と忍耐力が求められるからです。
自宅からいつもの「ステージ」までは水温の上昇を待って4千回転くらいのピアニッシモで静かにバイクを進めます。
やがて「ステージ」に着くや右手を力いっぱいひねって、ピアノ・フォルテそしてフォルテッシモへとLツインを歌わせるのです。
久しぶりに聞くショートストローク・Lツインは正にカンツォーネのように扇情的で情熱に溢れたサウンドを奏で、針が真上を指す度に官能の極致を味わうのです。
今の時期しょっちゅう乗ろうとは思いませんが、たまに乗ってみるとタンタン麺を食べた時のような鮮烈な刺激を味わうことができます。
3年でようやく7千キロ、イタ車はドイツ物と違って減りが早いからチビリチビリと乗っていきます。走っていれば80℃くらいで安定するものの、停止すると水温はすぐに上昇しご覧のように100℃間近になります。