帰ってきたビート
とりとめのない話です。
ポルシェという車に出会い、生き物のような息づかいの空冷エンジンを知り、車バカもこれで終着駅にするつもりでした。
ところが、色で惹かれた水冷を試乗したのが運のつき、同じ水平対向6気筒であるのに驚くほどスムーズで十分パワフルなエンジン、静か過ぎないサウンドは耳を澄ませば低く唸るエキゾーストノートで痺れてしまいました。
同じレイアウトを持った車でありながら別物を感じてしまうのは、比較する空冷がRSだからかもしれません。
RSのエンジンはリジットマウントになっているそうですが、おそらくこれが原因でしょうエンジンのバイブレーションがダイレクトに伝わるばかりか、スチールモノコックのボディー全体に共振してキャビン全体を震わせます。
それだけではなくデフのバックラッシュ音までカコンカコンと盛大に騒音を撒き散らしています。
水冷を知るまで、空冷のスタンダードモデルを知るまでは、これが普通と感じていましたからちょっと我慢できません。
RSの爆音は他にも原因があると思います。リアシートが無い事はエンジンルームから鉄板一枚で音が侵入してきたり、薄いリアガラスもしかり。
これら全てRSがRSたる所以なのですが、元々車を愛でたりスポーツカーとはかくあるべきなぞという信念など持ち合わせていませんでしたから、最初の頃は楽しいと感じていた事もどちらかと言えば辛い事としか感じなくなってしまいました。
RSは今でも千葉の山を駆け回り往復300キロくらいなら楽しんで帰って来ることができますが、それとて家に帰り着く頃には重たいハンドルやランバーサポートの効かないバケットシートからくる腰痛、鼓膜にジンジン響く音等で一秒でも早くシートから下りたくなってしまいます。
水冷より数段面白い車です。しかし、身体が面白さを感じる時間が段々と短くなってきました。
手放すにはまだ心残りがあります。
そこで、なんとか静かにする方法はないものかと考えてしまいます。
最も効果があるのは、エンジンマウントの変更ですが、はたして可能なものか分かりません。
あれこれ考えず水冷一台にしてしまえばいいのに、踏ん切りがつきせん。
「クウレイ」という言葉の響きは911の代名詞でもあるならば、こだわりは捨て切れないものがあります。
いろいろと考えていくうちに、自分にとって最良のポルシェとは何か?考えは膨らんでいきます。
メーカーは最新のポルシェが最良のポルシェと言っています。
確かにそれは否定しません。最新ではないけれど、水冷996に乗って強く感じた事であるからです。
しかし、趣味の乗り物おもちゃとして見ると物足りなさを感じてしまいます。
そこで自分最良ポルシェとはなにか。
まずは空冷であること。
そして、ある程度静かなこと。
あまり古いものは経年劣化が進んでいるから出来るだけ新しいこと。
カラーは、マリタイムブルーかシグナルグリーンつまりデーハーwwwであること。
ウイングやスポイラーの類はついていないこと。
ミッションはマニュアルであること。
シートはスポーツシートがベストだけれど、あまりこだわらない。
タイヤは17インチまでであること。
オーディオは最低でも4スピーカーあること。
「うんこ」のようなバリオラムがついていないシンプルであること。
そう考えていくと95年までの993、あるいは最終生産型の964。
いずれにしてもスタンダードモデルであることが欠かせません。
そうはいっても今自分が持っている911を売って別の911を買う余裕など無いし。
で、考えた揚句たどり着いた結論は、デーハー色と静けさの疲れない車は水冷996で、疲れるけどドライビングプレジャーを感じたいなら993RSでいくしかないという事です。
そんな事考えながら、しばらく実家に預けていたビートが我が家に戻ってきました。
9千回転オーバーまで回したトリプルサウンドを聞いたとたんに911はどれでもよくなってしまったのです。
ビート超面白い。
てな具合で、朝起きてから寝るまで車の事ばっかり考えてる大馬鹿であることを自覚したのです。
以上、私の脳みその中身でした。